監修と編集者の紹介

監修:中坊徹次
魚に出会い魚と楽しむ。

  魚の住んでいる世界は私たちからは見えません。釣り人は釣り糸を通して見えない世界に住む魚たちと交信します。釣りは魚に出会うための魚との知恵比べです。日本列島は魚の宝庫です。知恵比べの相手に不足はありません。

  太平洋沿岸では南からは黒潮が流れ、北からは親潮が流れてきます。このため、暖海系と寒海系の魚が住み、種類数も多いのです。また、日本海は対馬暖流が北上します。日本海沿岸で魚たちをみて太平洋沿岸で魚たちをみると、これらふたつの沿岸における種類の相違に驚きます。対馬暖流は黒潮より塩分が少し低く、このことも要因のひとつになっていると思われますが、魚たちの住んでいる日本列島の周囲の海洋環境は多様なのです。また、河川や湖沼といった淡水域も多く、ここにも魚たちがいます。

  磯釣り、防波堤釣り、浜での投げ釣り、船釣り、深海釣り、渓流釣り、川釣り、湖沼釣りなど、いろいろな釣りのジャンルがありますが、これらは魚たちの住み場所の多様さを表しています。それぞれの釣りで、釣れる魚の種類は違っています。磯釣りで釣れる魚は浜での投げ釣りでは釣れません。魚は種類によって住んでいる場所が違っています。釣り方が多くあるということは、それだけ多くの魚がいろいろな場所に住んでいるということなのです。

  春夏秋冬、日本列島は四季の区別がはっきりしています。産卵をするために、あるいは成長するために多くの餌を求めて、魚たちは季節によって動きます。水温の変化にも対応しなければなりません。暖海系の魚はある水準以下の低水温には耐えられません。春はメバルの季節といった魚のカレンダーは、魚自身の生活の季節におけるリズムと、水温などの季節変化が密接に関係して作成されています。季節によっていろいろな釣りの楽しみがあるのは、魚のカレンダーのためなのです。

  昔から見えている魚は釣れないといいます。また、見えていたら釣りの面白みはなくなるでしょう。見えない魚と知恵比べをするのには知識が必要です。魚のことを知らなければなりません。この図鑑には魚の知識がたくさんつまっています。この図鑑の中の知識で魚に出会い、美しい写真を見ながら、魚と楽しいひとときを過ごしていただければと思っています。

(※本書序文より)

京都大学総合博物館教授・京都大学大学院農学研究科海洋生物増殖学分野担当。専門は魚類学。農学博士。1949年生まれ。子供のときからの魚好き。記載した新種は新種30種、新亜種1種。魚類の進化に興味をもって研究をおこなっている。現在、魚類5億年の進化に関する本を執筆中。

主な著書
「日本産魚類検索全種の同定」
「魚の科学事典」
「日本動物大百科第6巻魚類」
「新さかな大図鑑」
「釣魚検索」

編著:小西英人
釣りたて、ぴちぴち。

  クサフグは知っていますよね。小さくて邪魔ばかりする釣り人の天敵のフグです。このクサフグが眼を閉じることを知っていましたか。釣ったときに、ふっと息を吹きかけると嫌がり、きゅううっと眼を閉じます。「まぶた」があるわけではありません。眼のまわりに括約筋があって、それで眼を閉じるのです。こうやってクサフグと遊ぶと可愛いものです。きゅううっと眼を閉じたクサフグの写真が載っている、それが『遊遊さかな大図鑑』です。

  フグの仲間はマンボウも含め眼を閉じるものがいることが知られています。しかし、なぜ閉じるのかは分かりません。魚とは謎だらけなのです。天敵のクサフグを見つめただけでも、謎はぼろぼろでてきます。謎は謎として受けとめながら、細かい所にこだわって創りました。

  ツリビトとは「こだわりの動物」です。こだわらなければ、ただの「ヒト」になってしまいます。ひとつの魚だけに、こだわるのも、ひとつの楽しみ方であるし、アマチュアリズムの精髄だと思います。しかし、その眼を、すべての魚に拡げてみると、その多様な世界に驚きます。

  外道などと嫌わずに、釣れる魚、釣れる魚、すべてを見つめてみますと、それぞれの美しさに驚きます。それぞれの形に驚きます。それぞれの色に驚きます。われわれ釣り人は、魚の、いちばん輝くとき、いちばんきれいなときを知っています。それを記録しようと思いました。われわれの魚が、鰭を拡げたとき、眼を閉じたとき、口を突きだしたとき、くるくると丸まったとき、すべてを記録して残したいと思いました。釣り場は、大荒れの船の上であったり、大雨の真っ暗な磯であったり、砂塵吹きあげる強風にさらされた砂浜であったり、足場の悪いテトラポッドの上であったりします。釣りの一般原則として、大変なところほど、よく釣れます。しかし、どこにでも背景板を持ちこんで、できるだけ白バックで、できるだけ鰭をたて輝いている魚たちの、美しい姿を残そうと思いました。多様な姿を記録しようと思いました。ひとりでは、なかなか集まりませんが、一所懸命やるうちに仲間も集まりました。29人の釣り仲間の写真も使わせてもらって、いまの日本の、いまの釣魚たちの、生き生きとした姿が、この図鑑に記録できたと思います。

  謎に満ちた、美しい魚たちが770尾、ここには泳いでいます。釣りたて、ぴちぴちの魚類図鑑ができました。

  どうぞ、お楽しみあれ!


(※本書序文より)

1954年、徳島県生まれ。桃山学院大学社会学部在学中に、釣りの専門出版社「株式会社週刊釣りサンデー」を父とともに創設。関西で初の週刊誌『週刊釣りサンデー』を創刊し、カメラマンとして活躍。2001年インターネットで釣りフォーラムが主宰する【WEB魚図鑑】【さかなBBS】の監修をして、図鑑解説や、ボードリーダーをつとめる。現在フリーの釣魚エッセイストとして活躍中。

主な著書
「新さかな大図鑑」
「釣魚検索」
「釣魚図鑑」