File.084「つい、うっかり・・。'78年に新種記載したばかりとは、妙に納得」

ウッカリカサゴの刺し身・煮付け



著者紹介

西潟正人【にしがたまさひと】
1953年、新潟県生まれ。服飾の仕事をしながら、インドなど世界を放浪。魚好き料理好きが高じて地魚料理店「魚屋」を、神奈川県逗子市で20年間営む。東京新聞・日刊ゲンダイ・NHK出版「食彩浪漫」などにコラムを連載しながら、フジTV「ポンキッキーズ」などにもレギュラー出演。現在CS放送TV・旅チャンネル「漁師町ぶらり」にて全国を行脚中。食と笑顔をテーマに、幅広く活躍している。
主な著書
「漁師の磯料理」(徳間書店)
「魚で酒菜」(徳間文庫)
「とっておき漁師料理」(NHK出版)
「東京湾の漁師町」・「漁師直伝」・「漁師町の、うめぇモン!」「市場食堂」(生活情報センター)
など多数。


バックナンバー
041
アイナメ
052
アオリイカ
031
アカカマス・ヤマトカマス
059
アカマンボウ
025
アカヤガラ
058
アラ
055
アワビ
044
イサキ
063
イセエビ
050
イセゴイ
053
イトヒキアジ
054
イトヨリダイ
017
イネゴチ
079
イボニシ
030
イラ
084
ウッカリカサゴ
013
ウツボ
012
ウマヅラハギ
061
ウルメイワシ
043
オオクチイシナギ
049
オニオコゼ
078
カサゴ
023
カタクチイワシ
026
カツオ
038
カナド
011
カワハギ
045
キダイ
070
キチジ
046
キハダ
029
キンメダイ
048
クサアジ
020
クロアナゴ
062
クロサギ
040
クロダイ
010
コノシロ
005
ゴンズイ
033
サヨリ
081
サワラ
060
サンマ
003
シイラ
019
シロギス
057
スギ
071
スケトウダラ
002
スズキ
028
スルメイカ
018
タカノハダイ
064
タチウオ
036
チダイ
056
ツバメウオ
009
トウゴロウイワシ
047
トビウオ
015
ニザダイ
008
ネズミゴチ
072
ノロゲンゲ
024
ハガツオ
014
ハコフグ
067
ハタハタ
075
ハバノリ
032
ヒイラギ・オキヒイラギ
027
ヒザラガイ
083
ヒジキ
042
ヒメ
021
ヒラソウダ
065
ヒラメ
076
ブリ
073
ホタテガイ
035
ホタルイカ
006
ボラ
001
マアジ
004
マコガレイ
022
マサバ・ゴマサバ
082
マダイ
037
マダコ
016
マトウダイ
066
マハゼ
039
マハタ
051
マンボウ
068
ミギガレイ
007
ミノカサゴ
074
メジナ
034
メバル
080
ヤリイカ・ケンサキイカ
069
ワカサギ
077
ワカメ

カサゴ料理が「煮付け・から揚げ」で知られるのは、浅海型の小さなカサゴが一般的だからだろう。ウッカリカサゴはカサゴ属でも深所型で大きくなり、日本記録は全長60a重量3.9s(遊遊・さかな大図鑑)という。ならば料理は「刺し身」にもしてみたい。カサゴなら皮も内臓も旨いはずだ。大きな頭は「煮付け」にして、1匹丸ごと堪能できる好日。酒の用意も、うっかりしてはいけないよ。
下ごしらえ
  • ウロコを取る
    皮も食すことになるので、ヒレの際などはとくに丁寧に取り除きたい。
    カサゴ属は背ビレとエラぶたの棘が鋭いから注意しよう。

  • 腹を開く
    エラぶたを開けてエラ元を切り、次にエラを喉から切り離す。1対の腹ビレを片方に寄せて、内臓を傷つけないように肛門まで腹を開く。

  • 内臓を取り出す
    内臓で可食部は「卵巣(精巣)」「肝臓(肝)」「食道・胃」「浮き袋」だ。破れやすい卵巣をまず取り外したら、全体を取り出す。
    内臓には延縄漁の釣り針がまぎれていることもあるから注意して、不可食部は捨てる。
    食道を含めた胃袋は開いてよく洗い、可食部として別に取り置く。
心臓も腸も不可食部に入れたが、決して毒物ではない。煮魚では脂が付着した腸も一緒に煮た方が旨いし、しごいてから湯通しして、酢味噌やポン酢で食べることもある。
仕上げ
  • 頭を落とす
    胸ビレの際から包丁を入れて、腹身は肛門まで大きく付けて切る。反対側も同じように切ったら、背骨を落とす。

  • 三枚に下ろす
    背ビレの際から包丁を入れて皮を切り、尾ビレの際で包丁を回し、腹側から中骨に沿って開いていく。
    背骨に当たったら包丁を立てて腹骨を切り、さらに中骨に沿って背側を開く。反対側も同じように開いたら中骨と2枚の片身で三枚下ろしだ。

  • 皮を引き、残った骨を取り除く
    腹骨をすき切ってから、皮を引く。片身の腹部中心には、まだ小骨が隠れている。小骨は「棘抜き」で抜いてもよし、切り取ってもよし。

  • 内臓と皮の湯通し
    沸騰した湯に「胃袋」→「肝臓」→「浮き袋」→「皮」の順に入れ、浮き袋はやや透明になったら、皮は縮んだころ合いに冷水に取る。よく冷やしたら、水気をしっかり拭き取る。

  • 刺し身
    皿に中骨を敷き、青葉を飾ると白身は引き立つ。湯引きした「副産物」の胃袋は千切りに、ほかは適宜に切って刺し身に添える。

  • 煮付け
    硬い骨の中心を避けて、頭を2つ割りにする。鍋に昆布を敷き、水と酒で煮て淡口醤油で味を整える。卵巣は火が通りにくいので弱火でじっくりと、腹骨にまだ身が付いていたら一緒に煮てもいいだろう。
内臓や皮の「副産物」だが、客人に説明なしでは全くつまらない。各部位ごとに山に盛れば、胃袋の次は浮き袋を食べてみよう・・ってことにもなるだろう。

ウッカリカサゴとは、妙な名前をつけたものである。「うっかり」に別な意味でもあるのかと広辞苑を開いたが、「気抜けして、ぼんやりすること。物事に気づかず、不注意であるさま。ウカリの促音化・・」やっぱり、「うっかり」じゃないか。

数の多いカサゴ目にあってフサカサゴ科も大所帯なのだが、カサゴ属になると素人にも大まかに見えてくる。代表は磯で釣れる「カサゴ」であって、小さいながらも味のいい魚で知られる。ウッカリカサゴはその兄弟分で沖合に棲み、カサゴよりも大きく成長するようになった。魚もデカくなると大味になると言うが、ウッカリカサゴはカサゴの味をそのままに成長していく魚だ。カサゴの刺し身は旨いが、いかんせん量が少ない。その刺し身が、たっぷりあるとしたらどうだろう。

魚の、それも刺し身の味の善し悪しは、包丁で切っている段階でほぼわかるもの。身の締まり具合や脂ののりがいいと、包丁も喜んでいるかのように軽快だ。ウッカリカサゴの白身がそれで、皮を引いたときのぽってりとした重量感、刺し身に切った肌の白銀のような輝き。庖丁人の腹はすでに満足であり、思いは「わかるヤツに、食べさせたい・・」のである。

メバルやカサゴに共通する特徴は、卵胎生だろう。大寒のころは産卵期で、はち切れんばかりの腹から無数の卵粒が流れ出る。よくよく見れば微小な魚で、目がついているのだ。